アニメ・マンガ大国である日本は、作品に登場するキャラクターのフィギュアも豊富。ガチャガチャやUFOキャッチャーで気軽に手に入れられるものも多く、子どもから大人までが人気キャラクターのフィギュアに夢中になっている。 MAマンさんは、そんなフィギュアを「3D2次元彩色」という独自の技術でリペイントするYouTuber。「フィギュア筆塗りChannel【MAマン】」を運営するMAマンさんの手にかかれば、どんなフィギュアも2次元へと戻っていく、そんな不思議な現象が起こるのだ。 今回、YouTuberの先駆者MEGWINさんが謎の美女MAマンさんと対談し、なかなか聞きなれない「3D2次元彩色」とは一体なんなのか、フィギュアの筆塗りや動画制作について話をうかがった。 「3D2次元彩色」はMAマンの趣味から生まれた! 『ジョジョの奇妙な冒険』に登場する空条徐倫のフィギュアを筆塗りするMAマンさん MEGWIN:3D2次元彩色をはじめたきっかけって何だったんですか? MAマン:もともとフィギュアが好きだったっていうのはあるんですけど、塗り始めたのは個人の方々がフィギュアを展示して、買えるようなレンタルショーケースで彩色を施したフィギュアが売られているのを見て、「自分もやってみたい」って思ったのがきっかけです。 既製品のフィギュアって色が塗ってあると思うんですけど、それを自分なりに色をのせて楽しむ文化っていうのが存在するんだっていうのを知って、UFOキャッチャーでとったフィギュアを使ってやってみようかなって思ったのがきっかけですね。 MEGWIN:それでなんでYouTubeを? MAマン:厳密にいうと、フィギュアを塗り始めたときはYouTubeをやろうと思っていなくて。美大を出ているのと、昔から続けている書道の師範の免許を持っていたりと、筆を握ることが昔から当たり前だったんです。なので、フィギュアにも色をのせてみたいっていう興味が湧いたんですけど、やってみたら面白くて。 フィギュアの色塗り用のSNSアカウントを作ったらいろんな方が見てくれるようになって、この楽しさを共有していきたいなっていうところから、自然な形でYouTubeを始めることになりました。 MEGWIN:趣味から始まった感じですか。 MAマン:フィギュアに色をのせることに関しては完全に趣味ですね。 MEGWIN:「3D2次元彩色」ってどういうものなんですか? MAマン:いわゆる2次元彩色っていわれるものは、ガンプラとかプラモデルでやられている方は昔からちらほらいたんですけど、3D2次元彩色っていう呼び方は私が聞いたかぎりだとなくて、私が勝手に作った造語なんですよ。 MEGWIN:そうなの!? すごい! MAマン:簡単にいうと、3Dのフィギュアを全方向から2次元的な楽しさで味わえるっていうところと、ぱっと見たときに「なんか3Dっぽいよね」というところをあわせて、3D2次元彩色って呼ぶようになりました。 MEGWIN:ぱっと見た感じってことか。 MAマン:2次元は一定の角度からしか楽しめないですけど、できるだけ360度楽しめるようにっていうコンセプトでやっています。 MEGWIN:じゃあ、フィギュアをどこから見ても3Dな感じがするんですか? MAマン:一応、そういう方向で作っていますね。 MAマンの仕事の極意は「どんな仕事も楽しんで」 240万回以上再生されている『ヒローアカデミア』トガ ヒミコのリペイントの様子 MEGWIN:フィギュアを塗るときって、原作って全部読むんですか? MAマン:マンガを全巻持っていて、原作をすべて読んでっていうのはないです。手をずっと動かし続けているっていうこともあって、アニメを基本的に見ているんですよね。昔から割とアニメ勢かもしれないです。いずれにしてもマンガとか資料は集めるようにしていて、アニメも1回見たものをもう1度見返すとかはしますね。 MEGWIN:作業しながらアニメ見るんですか? MAマン:ガチな話でいうと、アニメを見返しながら作業するっていうときもあります。なんだかんだ楽しくなっちゃうんですよね、見ていると(笑)。原作をリスペクトしているので、皆さんの印象は壊したくないし、いくらオリジナルのもので新しい面白さを届けるとはいっても、実在するキャラクターの印象はあんまり壊さないようにしたいという思いがあるからこそ、資料はめちゃくちゃ集めたりするんです。 MEGWIN:1回塗りつぶしちゃうと、もとの姿が見られないですもんね。再現するためにも、しっかりと見ておかないといけないですよね。 MAマン:マンガの絵柄とアニメの絵柄が違うこともあるじゃないですか。フィギュア自体もまた絵柄が違ったりするので、いま塗るフィギュアにはどっちが合うのかなとか、そういうところは自分なりに、フィギュアごとに考えるようにはしていますね。 MEGWIN:すごいですね。 MAマン:結局は人によってもどれが1番好きかは変わりますし、感覚的な問題になってくるので、最終的には自分がいいと思うもの、好きと思うものに近いものになりますね。 MEGWIN:原作見返すっていっても、なかなか全部見られないですよね。どのタイミングで何のキャラクターを作るかっていう順番って決めているんですか? MAマン:決まってはいないですね。本当にものによるっていう感じです。もともと塗りたいキャラクターはたくさんあるんですよ。 フィギュアってたくさんあるし、頭のなかで塗りたいものはたくさんあるんですけど、普通に「いまこれが塗れそう」っていうタイミングで頭の中にあるリストから選ぶこともありますし、一番くじやこれから発売されるフィギュアのなかから自分が欲しいものを買って、すぐ塗ることもあります。 MEGWIN: 趣味で塗るものとYouTube用に塗るものって分けているんですか? MAマン:私の場合は作りたいキャラクターを塗るようにしていて、現時点でYouTubeで皆さんに届けているものは、本当の意味で塗りたいものの中から選んだものなんです。今後公開するものに関しては、いま皆さんも注目しているフィギュアになりますが、スケジュールの関係で塗る順番が前後したりする場合もあって、絶対的なルールっていうのは私の場合は設けていないんです。 MEGWIN:なかには本当に綿密な計画を立てて作品をつくるっていうYouTuberさんもいますが、けっこう臨機応変なんですね。 MAマン:急にお仕事が入ってくることもあるので、けっこうスケジュールが前後しちゃうんですね。YouTubeとかこういう形でお仕事を始める前は、本当の意味で趣味としてやっていたんですけど、いまは状況がちょっと変わってきたな、というところはありますね。 MEGWIN:その葛藤、わかる。ほかのYouTuberさんもいいますけど、作りたいキャラクターと、そうではないキャラクターとありますからね。 MAマン:私の場合は作りたいキャラクターを塗るようにしていて、現時点でYouTubeで皆さんに届けているものは、本当の意味で塗りたいものの中から選んだものですね。 MEGWIN:本当の仕事は置いといて、っていう感じですね。 MAマン:本当の仕事の場合は、「本当はこっちのキャラクターの方が好きだけど……」っていうのがあったとしても、私の場合はそもそも作ることが好きなので、そういう時は色を塗るっていうところにこだわってやっています。モノによって何に1番重きを置いて作っているのかっていうところを考えて、楽しんでやろうかなって思っています。 MEGWIN:ちゃんと好きを混ぜていくっていうのがいいですね。いっぱい作ったと思うんですけど、1番印象に残っている作品ってどれですか? MAマン:「これが1番」っていうのがないんですよね。というのも、そのキャラクターや作品ごとにテーマをつくるようにしているので、1個1個違った思い出があるんですよ。 MEGWIN:僕も5千本以上動画を作っているけど、1番ってわかんない。全部きつかったなーって(笑)。 撮影・編集はマネージャーの独学 MAマンを引き立てる影の立役者の努力とは 一番くじで当てた『ONE PIECE』のトラファルガー・ローのフィギュアを筆塗りした様子 MEGWIN:カメラと編集ソフトって何使っているんですか? MAマン:マネージャーのmasaさんがカメラと編集担当しているんですけど、編集ソフトはAdobeのプレミアプロを使っていて、カメラはその時々によって変えているんですよね。 MEGWIN:使い分けているんですね。 masa:iPhoneのときもあれば、コンパクトデジタルカメラのときもあるし、ビデオカメラを使うときもあります。場面によって使い分けていて、室内の照明の色とかによってもカメラを変えますし、あとはガラスが多い場所なのか、少ない場所なのかによっても変えたりします。 フィギュアってガラスのショーケースの中に飾られているので、ガラスって絶対反射しちゃうんです。なので、反射しにくいように、フィルムをつけられるカメラを使ったりしています。 MEGWIN:そこもちゃんとこだわっているんですね。 masa:視聴者さんがちょっとでも見やすいように、工夫できるところはなるべく撮影できればなって感じでやってはいますね。 MEGWIN:絶対影が入っちゃうもんね。 masa:映り込みはけっこう悩むポイントですね。 MEGWIN:撮影するときはずっとカメラを回しっぱなしなんですか? masa:撮りっぱなしにすることもありますし、局所的に撮影することもありますね。 MEGWIN:企画を立ててから撮影、編集をして、1本の動画作るのにどれくらいの期間がかかるんですか? masa:フィギュアを作る時間が長ければ長いですし、短ければ短い時間で終わる事もあります。色々な事を並行しながら編集しているので、余裕を持って2日~3日ぐらいは欲しいかもですね。 MEGWIN:フィギュアを塗るのって、そこまで時間かからないんですか? MAマン:ちゃんとした作品を作るのであれば、それこそ1週間から1カ月くらいかかったものもありますね。臨機応変にやっているので、決まったことができないですね(笑)。 MEGWIN:編集の参考にしているYouTuberさんとかいます? masa:僕の場合はいろんなジャンルの動画を参考にしています。エンタメ系とか制作系、料理系、DIYとかスポーツ系、UFOキャッチャー系のチャンネルも参考にしますね。 MEGWIN:いろんなところからテクニックを盗むっていう感じなのか。 MAマン:もともと独学でやっているんですよね。似たようなことをやっているYouTuberさんがあんまりいないので。 masa:だからこそいろんなジャンルを見て、参考にするっていうことしかしていなくて。基礎的な部分は何もできないので。 MAマン:けっこう最初のころと最近の見せ方ってガラっと変わっているんです。最初はもっと「教えます」みたいな感じの動画だったんですけど、最近はフィギュアを塗らない人が見ても楽しめるような、なんならフィギュアはあんまり好きじゃない人でも、アニメとかマンガが好きだよっていう人たちが楽しめるようなものを作りたいなっていうところがあるんで。 masa:フィギュアを塗るっていうところもそうなんですけど、「誰が塗っているのか」っていうところは気にしながら動画を作っています。塗り手の思いとかどういう人間なのかというところは、やっぱり見ていただけるとより作品のいいところが見えてくるのかなと思うので、ひとっていうところは注目して欲しいですね。 MAマン:完成品だけを見るんじゃなくて、できれば塗り始める前の「こういう風に塗っていきたいな」とかちょくちょく喋っていたりするんで、そういうところを見てくれたら嬉しいですね。 MEGWIN:YouTubeをやっていて良かったことってありますか? MAマン:私自身がアニメ好きとかマンガが好きっていう人たちと繋がって、業界全体を盛り上げたいっていう思いが軸にあるので、そういう人たちの輪が広がっていくっていうのは、やって良かったなって思いますし、やりがいも感じています。 原作は好きだけどフィギュアは好きじゃなかったっていう人が、フィギュアを集めはじめましたみたいなコメントが届いたり、海外の人にも発信できているっていうところはすごく嬉しいですね。 MEGWIN:コンテンツ的には海外の方が見てもわかりますからね。大変だったことは? MAマン:いろんな意味で安定はしないですよね(笑)。 MEGWIN:しないですね、安定はね。 MAマン:自分自身があんまり安定を望んでいないからいいんですけど。でもやっぱりそこは気が抜けないというか、ずっと考えることは止められないのではと思います。 MEGWIN:確かにね。自分資本なんで、病気になっちゃったら困っちゃいますからね。 MAマン:そういう意味で言うと、そんなに余裕がなかったとしても、リスクを常に考えておかなければならないとか、わりと先のことさきのことを考えておかなければならないとか、臨機応変に対応する能力とかはかなり大切だなっていうのはつねづね感じています。 MEGWIN:すごい感じる、それ。めっちゃわかる。最後に今後の目標を教えてください。 MAマン:オリジナルキャラクターを作りたいっていうのもあるんですけど、もっと視聴者の方と一緒になって楽しめるような企画だったりとか、イベントだったりとか、そういうのを少しずつ増やしていきたいですね。 2022年5月現在、チャンネル登録者数が21万人を突破しているMAマンさん。キリっとした表情が光るシーンと、リラックスしながら“好き”を楽しむシーンの緩急が織りなす動画には、ほかのチャンネルにはない充実感が漂い、そんな魅力に視聴者が惹きつけられているのではないだろうか。 筆塗りの技術もさることながら、好きなことに真っすぐなMAさんの姿勢と、その姿をカメラに収め、編集で魅せるmasaさんのコンビ力が作り上げる同チャンネルの躍進はまだまだ続く予感。フィギュアをさらに楽しめるコンテンツとして、アニメ・マンガファンには一見の価値がありそうだ。 ■MAマンさんのYouTubeはこちら ■MEGWINさんについて:お笑い芸人として活動後、2005年にインターネット放送局「MEGWIN TV」を開設。2009年にYouTubeとパートナー契約を締結し、2017年にはチャンネル登録者数100万人を突破したベテランYouTuber。「オレがオレにオンデマンド(自分の好きなようにやる)」を謳い、日々動画を投稿し続けている。MEGWINさんのYouTubeはこちら
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